死荷重の解説/余剰分析|ミクロ経済学(20)
社会的総余剰は必ず減る
前節では、社会的総余剰が完全競争市場で最大になることを説明した。
この節では、政府による介入により市場がどう変化するのかを確認する。
社会的総余剰は、政府による介入が加わることによって政府が得られる便益、要するに税収も要素として加わる。
つまり、
消費者余剰+生産者余剰+政府余剰(税収)=社会的総余剰
となる。
税収が加わるのだから、社会的総余剰は増えるように思えるかもしれない。
しかし、社会的総余剰は完全競争市場で最大であるため、政府の介入により、社会的総余剰は必ず減るのである。
減った分を死荷重と呼ぶ。
その点をここでは死荷重がどの様に図示できるのか確認していく。
政府による介入を、課税と価格規制という二通りで考える。
課税による介入
ここでの課税は従量税を課した場合の効果について考える。
従量税での課税により供給曲線を上にシフトさせる。
図1を参照
図のように上にシフトしたときの均衡点の場合、消費者余剰はどうだろうか。
図2を参照
消費者が支払ってもいい金額はオレンジ色か囲んだ面積である。
また、実際に支払う金額は黄緑色の面積となるため、消費者余剰はオレンジから黄緑を引いたピンク色で囲んだ面積だ。
一方、生産者余剰はどうか。
図3を参照
生産者の収入はオレンジの面積となり、可変費用は黄緑の面積となる。
つまり、オレンジから黄緑を引いたのが差額だが、それが生産者余剰とはならない。
課税により、売上は上がったが、水色の面積は税金として政府に支払う必要がある。
結局、生産者にのこるのはピンクの面積のみだ。
そうすると社会的総余剰は、どうだろうか。
消費者余剰+生産者余剰+政府余剰=社会的総余剰
だから、ピンク、黄緑、水色の足した面積となる。
図4を参照
結果は同じだが、図4´も課税じの余剰を図示している。
図4´からもわかるように、課税する前(完全競争市場)の社会的総余剰からは、灰色で囲んだ面積だけ減少したことになる。
この減った分が死荷重となる。
価格規制による介入
政府が生産者に補助金を出す前提で、価格に規制を設ける場合を考えてみる。
例えば、政府がある財を市場に浸透させたいとする。よくあるのがエコ商品。
浸透させるためには、ある程度の供給量が必要となる。
しかし、価格が高ければ需要が伸びない。
そうした状況を打開するために、政府は補助金を出す条件付きで、価格を低く設定させる。
図5にて、その考え方を示す。
政府は均衡点より低い価格に設定すよう規制をかける。
その場合の価格をPgとする。
価格Pgのとき需要量はSgとなる。
しかし、需要量Sgと同じ供給量を実現しようとすると、価格がPsである必要がある。
そのため、政府はPs-Pgの補助金を出す。
補助金により、消費者が払う価格はPgだが、生産者が受けとる価格はPsとすることができる。
ここで、各余剰について考えてみる。
消費者余剰は、支払ってもいい価格-実際に支払う金額だから、図6となる。
生産者余剰は、生産者が受けとる価格(売上)-費用の合計だから、図7となる。
政府の余剰は、補助金として支払いになるため、図8の水色で囲んだ面積分だけ、余剰はマイナスされる。
消費者余剰+生産者余剰-政府余剰=社会的総余剰
社会的総余剰 = 図6の面積1,2,3 + 図7の面積2,4,6 – 図8の面積2,3,4,5
= 面積1,2,2,3,4,6 – 面積2,3,4,5
= 面積1,2,6 – 面積5
= 介入前の社会的総余剰-面積5
つまり、面積5が死荷重となる。
編集後記
図の作成に時間がかかりました。
余剰分析はとりあえずこの二通りを図で理解していれはよさそうです。
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